K2クラブハウス
2023年4月27日

【イベントレポート】3/23 学校に行かない生き方って知ってる?#3

Bon

『学校へ行かない生き方』もついに第3弾となり、いわゆる3話切りの瀬戸際を迎えました。

そこに万を持して登場してくれたのは広島県にあるNPO法人『ブエンカミーノ』の代表を務める『吉川望』さん。

今回は都市型道士Bonではなく、ひきこもりと転職を繰り返した一介の若者(諸説あります)として、配信を見ながら感じたことについて書き綴ってみたいと思います。

人生が難しくなったら駆け込む場所

まず配信中に何度か話題に出た単語『キャリアブレイク』。

これはおそらく『ひきこもりが見栄を張りたい時に使う単語100選』という本があったら間違いなく掲載されている良い単語だと思います。

キャリアブレイクは欧米だとボランティアやスキルアップのために一旦休職・離職する時、言わば制度や成長としての意味合いが強い言葉だったりするんですよね。

が、吉川さんの語るキャリアブレイクはもっと広い意味というか、シゴトもしてない・ガッコもいかない・オレなんもしてない、みたいな状態を悪く捉えすぎず、人生という大航海の合間にある時間、その全てがもうキャリアブレイクなんだと。

人によってはあるあるだと思うんですが、ひきこもって1年半くらい過ぎると「さすがにやべぇな」って思って履歴書作ったりする日がたまにあるんですけど、そうすると職歴欄でピタッと手が止まるじゃないですか。

大学とか専門学校でスキルアップしてたわけじゃないし、前職が労働時間月300時間超えてる超ブラック企業だったならともかく、空白期間を埋めるもっともらしい理由が浮かばなくて、布団に寝っ転がっちゃうあの現象。

もしキャリアブレイクって概念がもっと広まったら「キャリアブレイクしてましたぁ!」って言い張れちゃうって寸法ですよ。

ブエンカミーノ』はそういう立ち止まって考えている最中の居場所として気軽に立ち寄ってみて欲しい。そんな願いを込めて作られた場所だということなんです。なにそれ素敵。

孤立を予防する場所を作りたい

そのブエンカミーノを、吉川さんは色々な人が集う『港』に例えますが、実際に施設があるのは海ではなく山なので、鹿や猪が出ます。農業を活動の主体とするブエンカミーノにとっては紛れもなく害獣です。「かーわーいーいー」とか言っている場合ではありません。

そこで猟師でもある吉川さんが野に放たれた結果、狩った獲物を解体するワークショップが開かれます。食育や学び直しも兼ねて、内臓など処理が難しい部分以外は、キャリアブレイク中の若者が試行錯誤しながら食肉として切り分けていくそうです。

ブエンカミーノでは若者だけでなく、子育て世代や地元の高齢者など様々な世代の人々が緩やかにまとまり、曖昧につながっています。

ブエンカミーノという場を通して立場も年齢も異なる人と交流を深めながら、春夏秋冬、季節ごとに行う様々なアクティビティから旬を感じ取る生活・・・孤立や窮屈さとは無縁で、参加者が活力を取り戻していく様子が目に浮かぶようでした。

人生を歩んでいる人はみんなつま先立ち

ただ『若者自立支援団体』ブエンカミーノに来たらもう安心、ってわけでもなく。

というのも、自立支援ってどうしても『あれが終わったらこれをやる』とか『何時までに寝て何時までに起きる』って感じの管理・監督的なやりとりが増えてしまうんですよね。

なにせ、夜10時間くらい寝たのに昼間まだ眠いとか、ゴミ捨てがめんどくて部屋に放ってあるレジ袋が第2・第3のゴミ箱になってるとか、『規則正しい生活』にケンカ売ってる習性がなかなか抜けないので・・・(実体験)。

そうすると支援する人に依存した生活になりがちで、吉川さん曰く『自分の全体重を支えてもらおうとする人』が出てきちゃうのが泣き所。

そういうパターンになりそうな時、吉川さんがどうするかってーと「お前がいないと俺は駄目駄目なんだよ!」という状態に持ってくんだそうです。

ブエンカミーノは前述の通り農業を通して支援活動を行っているので、当然農作物を育てながらコミュニケーションを取るわけですが、実は分担や共同がしやすいもの、裏を返せば『多人数で作業しないと効率が悪い』農作物を選んで育てています。

つまり『吉川さん1人ではどうにもならない状況』に引っ張り込むことで、「駄目だコイツ・・・俺がなんとかしないと」という自立心を芽生えさせていく狡猾な手法(言い方ぁ!)を取り入れていると言えるでしょう。

あと吉川さんは割りと鍵も携帯もよく見失うので、一緒に探してもらったりするそうです。

・・・これはあれですね、吉川さんは千尋の谷に自分も落ちちゃうタイプですね、きっと。

人と関わり合ってればいい

もっともこの『あえて相手に何かをお願いして、それをやってくれたことに対して感謝する』というプロセスは、何も支援団体の専売特許というわけではありません。

吉川さんは「僕らと出会ってその子の人生が好転していく可能性が出ること、それが支援なんだ」と語ってくれました。

家族でも友人でもブエンカミーノでもK2でも、誰かを頼ってくる人って多かれ少なかれ「人生がうまくいかない」と感じている一方、大抵の人は『思い通りの人生』がレアケースに過ぎないことを頭ではわかっているわけで。

じゃあ人生が好転する人とそうでない人の違いってなにかと言ったら、やっぱり人との関わり合い・・・もうちょい捻った言い方をするなら『思い通りにならない人生を分かち合える仲間』がいるかどうかなんです。

ちょっと方向性が違うんですが、深夜にカップラーメンを食べるとそりゃもう美味しいけど、それに加えて「丑三つ時のラーメンが美味くてどうにもやめられん」「わかるー」「それな!」みたいなやりとりができる相手がいると、ちょっと嬉しいじゃないですか。

どんなにしょうもないことでも、自分の感覚や価値観を認めてくれる他人の存在ってありがたくって、そこまで理解し合えるのであれば『困ったときはお互い様』の精神で相手のために行動できる人は多分少なくないはず。

そういう関係性を築くためにはどこかしら『隙』が必要で、その隙をきっかけに頼り合いや支え合いが生まれ、『好き』につながる(このわざとらしい掛詞!)仕組みが吉川さんやブエンカミーノの魅力になっているのかなと、おぼろげに感じました。

進む続けることより進み始めることが大事

最後に、吉川さんが語ってくれたブエンカミーノの行動理念として「わたしはあなたを助けることはできない。でもあなたはあなたを助けることができる。だからわたしは、あなたがあなたを助ける術ときっかけを一緒に探す」という言葉がありました。

これは先程の頼り合いや支え合いが苦手な依存的な人に対するメッセージであり、同時に『善意で誰かを支援しようとする人』が意識すべき行動規範であると思います。

極端な話、個人にしろ組織にしろ、相手の人生に対する責任までは持てないわけで、せいぜい倒れそうなその人の体を、少しの間だけ支えるのが精一杯。

誰だってしんどい、吉川さんでもしんどい、筆者はしんどくなる前に逃げるけど、逃げ続けるのもなかなかしんどい。

そういう時、内にこもって自問自答するんじゃなくて、安全な場所で人と対話してみる。学校に行かなくてもいいし、仕事に行かなくてもいいけど、誰かとつながっておく。お互いに再会できたことを喜び合える居場所があれば、それが自分の支えになる。

思い出を軸に人生を進むという、1つの解答を垣間見た1時間でした。

吉川さんの航海に星の導きがあることを祈って。ブエンカミーノ!

Bon

最初に就職した会社を半年で退職後、非正規たまにひきこもりの末、ECサイト運営の仕事に就くも1年で新型コロナでサイトが閉鎖。その後K2に漂着。 「何事も要領よくこなせる人」「何が何でも諦めずに目標を達成した人」に憧れながらも、そんな人に「なれない」まま、群れから離れて生活する一匹狼の私。「都市型道士の一匹狼生活」はそんな私のような人が今日を生きるためのきっかけを掴める場所です。