戦争嫌いの天才!ヤン・ウェンリーを深掘り!
前回、銀英伝愛を語り合った「銀英伝座談会」、今回は、自由惑星同盟の主人公、「不敗の魔術師」ヤン・ウェンリー提督に、スポットを当てて深掘りしますよ!
️ まずはヤン提督の第一印象から!
まず最初、「ヤン・ウェンリーってこんな人なんだよ」っていうのを、お二人にざっくり語ってほしいんですが、どうでしょう?

そうですね、多分第一印象はきっとパッとしない感じがある主人公だと思うんですよ。もう一人のラインハルトがすごい完璧超人マンなのに比べると、このヤンの方は…パッとしない。
ええ。アニメの最初の方で、帝国の描写があって、同盟に移って出てくるんですけど、「この人が主人公?」みたいな感じで。セリフとかもちょっとこう、若干嫌味がかかっている言い回しが多いんです。
たしかに!最初のシーンって、戦艦で上官に進言したけど聞き入れてもらえないで、「負けなければいいとか、死ななければいいね」みたいな愚痴言ってましたもんね。投げやりな感じ。
投げやりですね(笑)。でも、そこが彼の魅力の一つなんですけど。
軍に入ったのは「タダ」で歴史を学ぶため!?
彼は何よりも、軍人でありながら「戦争が大嫌い」な人なんですよね。この矛盾、簡単に説明してもらえますか?
そう、もともとヤンは、少年の頃から軍人なんか志望しなかったんですよ。
じゃあなんで軍人に?
お父さんが宇宙船事故で亡くなって、ヤンは一人取り残されて路頭に迷うんです。でも、彼は「歴史を学びたい」という夢があって。
で、大学に進学するお金がないから、色々相談したら…「同盟軍士官学校の歴史研究科なら、ただでやれるよ」って言われたんです。
ただで勉強できるっていうのが理由だったんだ!軍人になるけど、まぁタダなら行くか、と。
そうなんです!でも、彼はもともと一般的な生活能力とかは中の下だったのに、なぜか軍事の才能だけが飛び抜けていた。
皮肉な話だ…。
そう。本人はすぐに辞めて「年金暮らしで歴史家になりたい」のに、なぜか与えられた場所でちゃんとした仕事をしちゃうから、周りがダメな分、ヤンが補填しちゃって。気づいたらどんどん昇進していく、という流れなんです。
自分の気持ちと裏腹に才能が開花して出世しちゃった、と。
だいたい最初にアニメで登場したときも、進言が上官にウケが悪くてクビになったけど、結局ヤンの言ってた通りになって再評価される、みたいな。あとは、戦いには負けたのに、政府が市民に完敗と言いたくないからパフォーマンスで昇進させるとか。
「エル・ファシルの英雄」っていうのも、そういう流れで生まれたんですよね。民間人を一人も犠牲を出さずに脱出させたから、民衆の人気がすごくて「とりあえず昇進させとこう」と。
戦争がうまい職業軍人だけど、出世欲ゼロ。この矛盾の背景には、ヤンの深い思想がありますよね。
はい。ヤンは歴史家になりたかったので、彼の周りには名言が多いんですが、僕が一番印象深いのはこれ。イゼルローン要塞を攻略する時の話で。
おお、シェーンコップとのやりとりですね。
恒久的な平和は成り立つのか、という問いに対して、ヤンが返したのが、
「恒久的な平和なんて人類の歴史にはなかった」。
「でも、何千年かの平和で豊かな時代は存在した。要するに、私の願いはたかだかこの先数十年の平和なんだ」って。
他にも名言がたくさんあるんですけどね。
現実的なんですよね。戦争は続くだろうけど、今起こっている争いを一刻も早く終わらせるために戦っている、という。
歴史に学びつつ、人間の愚かさも分かりつつ、「最善」を尽くそうとしている。なるほど、彼の人となりがわかりますね。
そしてヤンが戦ったのは、民主共和制というイデオロギーを守るためなんです。ラインハルトが率いる帝国は、独裁者が有能なうちは良くても、後の世で「バカな息子」や「取り巻き」で腐敗するリスクがある。
確かに。
今の自由惑星同盟が腐敗していても、「表現の自由が保障されている」民主共和制の方が、市民が責任を持って政治に参画できる分、絶対にマシだ。だから俺は、同盟のために戦うんだ、と。
その話を聞いていて思ったのは、ヤンは主要人物の中で、一番「頭の中の考えの奥底が硬い人」なんですよ。
表面は柔軟で柔らかいんですけど、どんなにラインハルトが素晴らしい改革をしても、それを成り立たせている「枠組み」が独裁である限りダメだ、という考えは、決して譲らない。もし物語を無視して考えたら、部下を連れてラインハルトの下に亡命するのが一番楽なんですよ。でも、ヤンはそうしない。
矛盾した行動の裏にある「ブレない軸」
その「硬い部分」が、彼の矛盾した行動にも現れていますよね。バーラトの和約で政府から停戦命令が来た時の話。
そう!あの時、ラインハルトを討てば間違いなく勝てた。でもヤンは「軍人が政治をやることにになっちゃう」からと、政府の停戦命令に従ったんです。
民主共和制の軍人という建前は守った。
ところが、その後、戦艦や空母を帝国に渡すのを拒否して、亡命軍人のメルカッツに託し、自由惑星同盟という国家そのものは見捨てるんですよ。
戦力を残しておかないと、民主共和制を再興する「タネ」が残らないから。
なるほど。彼は、「民主共和制」という思想を守るためなら、それを載せている「同盟」という国を裏切ってでも、大事なものを守ったということなのかも。
そうなんです。彼の「一番硬い部分」がブレないから、一見矛盾した行動に見える。
愛すべき「だらしなさ」も魅力
いやー、熱いですね!でも、ヤン提督の魅力は、こういう思想だけじゃなく、人間的な部分にもありますよね。
ありますね!皮肉屋っぽいところが好きです。上官たちに嫌がらせでいびられる会議に出た時、真面目に反論するのが嫌になって、「もうこんなところやめてやる!」って辞表を常に忍ばせていたりとか。
用意周到すぎる(笑)
あとは、自分の艦隊の就任式に遅刻してきたり。
そうそう!ブランデー入りの紅茶が大好きで、コーヒーは嫌いなんだよね。ユリアン(部下)がいない間に、お酒の出費がめっちゃ増えてたとか(笑)。
ユリアンに「お酒は人類の友だぞ。友人を見捨てられるか!」って言ってましたね!

そういう、大きな戦争の辣腕ぶりと、テーブルの上に座ってあぐらをかいているような日常のギャップがね、たまらない魅力ですよね。行儀良くないんです(笑)。
そう!ちゃんと椅子に座ってる方が珍しい!
ヤン提督の魅力は尽きませんね!
今回の座談会で、ヤン・ウェンリー提督が「ただの天才軍人」ではなく、「理想と現実の矛盾を抱えながら、最低限の平和と民主主義という哲学を守ろうとした、愛すべきグータラな歴史家」であることが改めて浮き彫りになりましたね!
次回もどうぞお楽しみに!
